祝!! 着倒れ方丈記、復刊!!
『着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS』という大きな本がある。
横長の本で、開くと住人と彼/彼女らが偏愛するブランドの様々なアイテムが敷き詰められた部屋の写真が、密度そのままに読者を圧倒する。
著者というかカメラマンは都築響一氏。彼のその他の作品に『TOKYO STYLE』という(僕の頭の中での)90年代の東京を圧縮したような写真集もあり、ああ、やはり僕の想像しているような東京は確実に存在したのだな、と2010年代になってからその写真集に初めて触れた僕は奇妙だけど懐かしく思った。
『TOKYO STYLE』が文庫化され、現在も新規顧客を獲得し続ける中、件の『着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS』はいつの間にか中古でしか手に入らない状況となった。
そうなると、知る人ぞ知る妙にファンの多い本、という扱いになった、はずだ。もちろん都築氏は有名な方なので決してマイナー作品というわけではなかったと思うのだが、新刊書店にいっても置いてないというのは当の写真集にとっては困難な状況なのは間違いない。
僕もたまたま知人に『TOKYO STYLE』を勧められて、読んだらもの凄く頭にガツンときたので、似たようなアングルだけどより濃度を高めた本作を中古で探して手に入れたのだ。
中古で探して、といっても今はネットを漁れば(そして価格を気にしなければ)絶版本もほぼ手に入る。
ちょうどブランド服をアホのように新古品で買い集めていた当時の僕は、この本を読んで「あー、僕はここに載っている人たちとは似ているようで違うんだな」と真っ先に思った。
彼・彼女らの執着ぶりは、未見の方は復刊される本で実際に確認して欲しい。
家賃や食費や生活に必要なスペースを削ってでも、自分の愛する特定のブランドを買い集める。もちろん平均より収入の高く、ファッションに対する感度の高い人もいるけど、例えお金がなくても「これが自分の生きる道」と思って収集を続ける人だってこの本にはたくさん載っている。
僕はただ単にセールにかかって破格値になった商品を手当たり次第、ブランドを気にせず買うだけ。
ハイブランドに必要不可欠な、そのブランド独自の哲学に惚れ込む、という経験が僕には無かったのだ。
当時の僕の部屋だって様々なブランド品で埋め尽くされ、床に放置され、洗濯を忘れられ地層のように積み重なっていたので、知らない人からみれば僕も、この本に記録された人たちと同じように写る可能性はある。
でも、やっぱり、僕にはこのブランドでなければならないという明確な、いってしまえば「思い込み」がないのでただ単に散らかった部屋だ。
思想とともに「美しく散らかった」、彼・彼女らの部屋を羨ましく思った。
決して、住みたいとは思わないけど(笑)。
そんな、それぞれの小さな宇宙が詰め込まれたこの写真集が1月20日に復活する。ネットニュースにもなっているから、この小宇宙を目の当たりにする新たな訪問者も増えることだろう。価格は5000円をオーバーするのでおいそれと買えないかもしれないけど、頭の隅に、もしくは本棚の隅に置いておいても損はないです。
果たして、時を経た住人たちはいまでも同じようにブランド服の重力に引きつけられているのだろうか。
少しでも安く手に入れたいよ、という方はこちら
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